感想みかん

感想、レビュー、実体験等を書くブログ

ポジティブ思考がプラスどころかマイナスの影響を与えるケースが書かれている本

最終更新日:2017年9月16日 記事を書いた日:2016年12月24日

ポジティブという言葉一つとっても人によっていろんな捉え方がある。
数年前、テレビのインタビューでサッカーの長友選手が、試合前に最悪のシチュエーションを想定してから試合に臨むと言っていた。その方がパニクらずに対応できるという。前向きをアピールするプロ選手が多い中でこの考え方は異色だ。でもこれはポジティブな結果を出すためにたどり着いた現実的な手段なんだけど、最悪なことを考えること自体をネガティブだとして嫌う人もいる。

感情は伝染すると言われているせいか、誰かと繋がるSNSなどネット上ではネガティブな意見はとにかく書きにくい。たまにネガティブ全開なアカウントも見かけるが、それは決まって匿名で心情を吐露している。実名の場合はネタの場合を除き、スーパーネガティブな人はめったにみかけない。発言の半分以上はポジティブな発言で構成される。前向き、楽観主義、ポジティブ思考が推奨されているような世の中の暗黙のルールが存在する。ポジティブ思考が極端な人だと、ネガティブな発言をする人とは一切付き合うなというような排他的な考えまで行っている場合もある。

僕は自分がポジティブなのかネガティブなのかもよくわからない。人生をより良くしたいと思う点はポジティブだろうけど、自分のエネルギー源はネガティブなところから湧き出ている気もする。それに自然に湧き出る両方の感情を持っていたらダメなのだろうか。ポジティブとは具体的になんなのかの定義もあいまいだ。楽観主義なのがポジティブってことなのだろうか。

そもそも人はポジティブ思考でないとだめなのだろうか。ポジティブ思考を推奨する本は山ほど出ている中で、ポジティブ思考の効果に疑問を呈する本も少なからず出ている。物事を両面から捉えるにはこういった本も読む必要があると思ったので少し読んでいる。

「成功するにはポジティブ思考を捨てなさい(著者:ガブリエル・エッティンゲン、訳:大田直子、講談社)」(以下ポジ捨て)も、現状のポジティブ思考に疑問を呈する本の一つだ。なぜか発売日に買った。結構おもしろくて、これは話題になるんじゃないかなーと思ったが、全然ならずにただ季節は過ぎていった。
ポジ捨ての著者でドイツ人のガブリエル・エッティンゲンさんは、ポジティブ思考が実際にどのような効果をもたらすのかの実験を20年ほどした結果、ポジティブ思考がプラスどころかマイナスになってしまうケースが多くあることを見つけてる。もともと研究を始める前は、ポジティブ思考はいいものだと思ってスタートさせたというのだから驚きだ。
邦題はポジティブ思考を捨てなさいだが、原題からするとポジティブ思考を考え直そう、ぐらいだろうか。リアル・ポジティブみたいな感じでもいいかもしれない。いくつか心に残った点をメモしたい。

夢見る人はなかなか行動する人にならない。私の研究では、将来についてただ夢を見るだけでは、その夢や願いがかないにくくなることが確認されている。 (p6)

夢見るだけじゃだめらしい。この一文だけでもなんで?ってなる人は多いだろう。

下記のアメリカとドイツの考え方の違いについての描写も興味深い。

アメリカではポジティブ思考がかなり高く評価されていることに、最初は衝撃を受けた。ドイツでは誰かに調子はどうかと訊いた場合、ふつうは「ゆうべよく眠れなかった」とか「うちの子犬が病気になって心配なの」などと、率直な答えが返ってくる。アメリカではだれもが「元気だよ」と答えることがわかった ー たとえ心配なことがあっても。(p20)

これ、日本もです。前からなんとなく気づいていたけど、排他的なポジティブ思考はアメリカの輸入品なのかもしれないな。最近はポジティブビジネス大成功のせいか書店でも目に付きやすいところにポジティブ本が置いてあるけど、昭和の時代は暗い思考も許容されていたというか自然だったのではないかと推測する。それがよく表れているのがヒット曲だ。ネガティブ節全開な感じの歌がヒット曲になっていた。「昭和枯れすすき」など、なぜ1位になれたのだろう。中島みゆきとか、尾崎豊とか、どっちかというと暗い感じの曲のほうが僕は好きなので、アメリカ的な受け答えよりもドイツ的な受け答えのほうが好きだなー。あれ、でもアメリカもめっちゃ暗い曲のヒット曲結構あるな。ひょっとして口に出せないから歌にしているのかな。

過去の経験とかけ離れたポジティブな空想や願い、そして夢は、充実した人生に向けて行動するモチベーションには変換されなかった。正反対のものへと変わったのだ。(p28)

ふと2014年のサッカーW杯で日本代表選手達が優勝すると豪語しながら予選リーグで敗退したケースを思い出した。プロフェッショナルである彼らは結果はでなかったけど、モチベーションには変換されていたのだと信じたい。
過去の経験とかけ離れたポジティブな空想や願いがマイナスになるのは、恋愛においても就職活動においても当てはまっていて、実験で過去の経験に基づかずにポジティブな空想をしていた人ほど成功していなかったというから恐ろしい。でもこれはなんとなく自分の体験とも当てはまる気がする。頭の中だけでうまくいくことを想像して、実際には行動に移さなかったことがある。なんとも恐ろしい話だ。

(アメリカの金融面をコンピューターで調査した結果として)ポジティブな新聞報道が多いほど、その翌週と翌月のダウが下がっている。(p36)

所与の大統領任期の就任演説がポジティブであるほど、次の大統領任期のGDPは低く、失業率は高くなっている。(p36) (中略)経済政策を成功させたい政治家は、就任演説で景気がよくなる話をあまりしないほうがいい。(p38)

新聞や政治家が前向きな発言をすると景気が後退するという皮肉な話だ。でもネガティブな演説ってなんだろう?現実的な話ってことかな。耐え難きを耐えよというようなのが究極かもしれない。

ここまでいくつかピックアップした部分は本の前半の話で、前半はこういった実験とその結果がいくつも書かれている。
後半は、実際にどうしたら目標に近づけるのかの方法で著者が発案する「WOOP」のやり方が書かれている。 本の後半はいいかげんに読む習慣がある僕が、後半の内容を超噛み砕いて言うと、夢を見た後で現実を見ろ、ということだろうか。実際の障害を想像することが大事なようだ。夢見たものを現実というハンマーでぶっこわしてから道を整備したほうがいいらしい。

結局のところ、楽観主義なポジティブ思想を遂行したほうがいいって本もあるし、この本のように過去の経験から現実的に計画しろって本もあるからどっちを信じるかは好みになるのかな。でもポジティブ思想は時に排他的で攻撃的な場合があるから、そこまで行ってる人は気をつけるようにする。僕の過去の経験からいって、ベストセラーのポジティブ系自己啓発本は確かに面白いんだけど、勢いが出るのは読み終わって最初の3週間ぐらいのことで、その後は逆に前よりもさらに気分が落ち込んだりすることもある。

ポジ捨てに似た本で、「ポジティブ病の国アメリカ (バーバラ・エーレンライク著、中島由華訳、河出書房新社)」という本も文中に紹介されていたので少しだけ読んだ。著者はがんにかかったが、そこでもポジティブ思考が強要されることが多かったという。

ポジティブ思考できない(中略)そのこと自体がもう一つの病気と同じような重荷なのである。(p54)

と書いている。深刻な問題だ。その他、ポジティブ思考が多いはずのアメリカでは世界全体の抗うつ薬の3分の2が消費されているなど、興味深い話もたくさん含まれている。

 

追記:2017年9月16日

この記事は去年書いたものですが、公開していなかったので、今頃公開します。書いただけで満足するケースが結構あります。もう読んだ本の内容を忘れているっていう。。。あとでもう一度目を通さなきゃ。

 

動画があったのでURL貼っときます。英語字幕ですが。

Rethinking Positive Thinking (Gabriele Oettingen, New York University) | DLDwomen 14 - YouTube